最終更新:2017年2月5日
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 医療疫学分野 教授
福島県立医科大学 副学長
福原俊一
北海道大学医学部卒、横須賀米軍病院インターン、カリフォルニア大学(UCSF)で内科研修後、循環器・総合内科臨床に従事。 1990年Harvard医科大学 客員研究員(修士取得)、東大医学部講師、を経て、2000年現職に。東大教授併任(-2002)。 2005年、京大社会健康医学系専攻(SPH)内に「臨床研究者養成プログラム(MCR)」を開講し、これまでに164名の修了者(うち30%が大学教員、4名が教授に)を輩出。 2013-16年京都大学医学研究科 副研究科長。 2016年京大病院内に新設された「臨床研究教育・研修部」の部長を兼務。世界医学サミット (WHS) 第7回本会議 (ベルリン、2015年)にてpresidentを務める。 米国内科学会(ACP)専門医・マスター(MACP)、 ACP日本支部副理事長、日本プライマリ・ケア連合学会理事。2016年に設立された日本臨床疫学会の初代理事長に就任。(www.clinicalepi.org) 2000年に開講した医療疫学分野から、約70名の大学院卒業生を輩出、その60%が大学教員(うち5名の教授を含む)研究室から350編以上の英文原著論文を発信。
講演内容
データベース研究は医療を元気にする
1990年代末にEBMが世界、そして日本に現れ、浸透・定着した。このEBMの元となるエビデンスが日本に殆どないという驚くべき事実が明らかになり、以来大規模臨床試験が盛んに行われたが、各領域のオピニオンリーダーや医薬産業のイニシアチブで行われ、若手医療者はその末端の作業に従事するだけであり、研究へのモチベーションは殆ど起こらなかった。その結果、日本発の臨床研究は世界30位に凋落した。しかし近年、大規模な医療データベースに若手医療者でもアクセスする可能性が高まり、また臨床試験だけではなく、観察研究の可能性も世界的に認識されるようになり、若手医療者自らの診療現場での悩みや課題から生み出したリサーチクエスチョンに基づく自分自身の臨床研究を行うことが不可能でなくなった。このことにより、若手医療者が臨床研究への高いモチベーションを有することになり、今後日本から臨床研究の発信が盛んになることが期待される。しかしこれを可能にするためには、優れた人材育成プログラム、若手医療者の学習や研究の時間をプロテクトするしくみ、彼らの研究を支えるインフラ、などが必要となってくる。もしこれらのことが可能になってくれば、日本発の臨床研究は、世界のトップレベルになり、世界の医療を変える可能性さえ出てくる。まさにデータベース研究は、若手医療者を元気にすることにより、医療を元気にし、そして国民を元気にすることが期待されているのだ。
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